2013年8月17日土曜日

成功の方程式を示せない「営業プロセス」に意味はありません

「ちゃんとやってたつもりなんですが・・・」。そんな言い訳の後に「今回はダメでした」という言葉。

「おまえ、何やってたんだよ。」と上司の文句も後の祭り。
「順調だと言ってたじゃないか・・・」。

営業個人の能力や資質に問題があったのでしょうか。かれには営業のセンスがないのでしょうか。管理者である彼の上司は、そういう彼の能力や資質を見抜けず、営業活動の問題を指摘できなかった訳ですから、管理者としての資質にも問題があったのではないでしょうか。

同じようなことを同じ営業が繰り返しているとしたら、それは、彼自身の問題なのでしょうか。もし、他の部下にも同じようなことがあるならば、管理者の問題なのでしょうか。

もちろん成績優秀な営業もいるでしょう。しかし、それは彼個人のノウハウによるものであり、それを学ぼうにも、個人的な体験談や精神論として語られることが多いのではないでしょうか。気付きはあっても、じゃあ自分はどうすればいいか、に結びつかないことも多いのではないでしょうか。

営業として成果を上げ、評価されたからこそ営業管理者としての役割を任されているひとは多いはずです。部下が自分の抱える案件で相談に来たとき、「俺の若い頃はなぁ」と過去の武勇伝と教訓を伝えてはいないでしょうか。それはこの案件でも通用するのでしょうか。貴方の伝えた言葉で部下の行動は変わり、業績は伸びるのでしょうか。

私は、このような問題を個人の資質や能力と捉えることには抵抗があります。それでは、問題解決の放棄です。問題の本質は、営業活動をすすめてゆく手順、言い換えれば、「営業プロセス」にあると考えるべきです。この考えがあればこそ、改善のメカニズムが働きます。個人の資質や能力は、このプロセスをうまく使いこなす資質や能力となり、何をどう育成すればいいかを具体化しやすくなるはずです。

営業目標の達成は、営業の使命です。営業管理者は、組織全体として、目標を達成しなければなりません。

しかし、現実には、営業活動は、個々人の経験に頼っている場合が多く、結果として、それぞれの自助努力に依存しています。また、営業活動の進め方は、人によるばらつきも大きく、組織全体として安定したパフォーマンスを維持することは、容易なことではありません。

優秀な営業の暗黙知に基づく自分流の営業活動の手順は、組織として共有することは難しく、案件の進捗やリスク評価を客観的に行うことはできません。加えて、個人としての成功体験やノウハウを後進の育成に役立てる場合も、「背中を見せて育てる」といった徒弟型、体験型の伝承に頼ることになり、これもまた個人の主観や自助努力に大きく依存しています。

このような状況を改め、安定的かつ継続的に、営業活動の勝率と生産性を高めるための取り組みが必要です。そのためには、営業活動のプロセスやノウハウを「行動」として体系的に「見える化」すること、つまり、「営業活動の行動プロセス」を洗い出す必要があります。

「営業プロセス」という言葉を聞かれる方も多いのではないでしょうか。実際、検索してみると実に多くの情報が出てきます。そんな中の一例を見ると、こんな例がありました。

仮説構築⇒プレゼン⇒ネゴシエーション⇒クロージング

なるほどと思われるかもしれませんが、でも具体的に何をすればいいのでしょうか。いや、それだけではなく、何をすれば案件を獲得できるのでしょうか。

ちょっと横道にそれますが、SFAの中には、もっと粒度の細かなものもありますが、このように営業プロセスを「進捗段階」と定義しているものがあります。考えて見れば当然のことで、SFAは本来、案件の進捗段階(パイプライン)と予実を管理者が把握するための仕組みです。つまり、営業個々人が自分の営業活動の品質を高めるための道具として作られたものではありません。

SFAを導入すれば、営業力が向上する。売上が伸びる。」というキャッチフレーズをよく耳にはします。確かに、自分や部下の営業活動の進捗が見える化されることで、やるべきことや課題の存在を気付く切っ掛けを与えてくれます。その気付きに従って行動できるのであれば、この言葉にも一理はあります。しかし、「案件を獲得するためのアクション」と言った具体的な行動まで示してくれるわけではありません。結局は、個人の自助努力に期待することになってしまいます。

SFAは管理者が案件の進捗段階と予実を管理するツール」だとすると、担当営業から見れば、「SFAは管理者への報告手段」でしかありません。

自分のためではなく、報告のためのものであるとすれば、忙しい営業にとっては余計な仕事が増えるだけの話です。担当営業が自分の活動をタイムリーに正確に入力するモチベーションは生まれません。ここにこそ、よく聞く話ですが、「SFAは導入したが、うまく使われていない」原因が、あるように思っています。

私は、「営業プロセス」を「案件の進捗段階を示す表現」では不十分だと思っています。「この行動=アクションをすれば、案件が獲得できる」という手順、つまり、「案件を獲得するために行うべき行動のチェックリスト」にすればいいのではないかと考えています。

そういうものであれば、営業が自分の営業活動の品質を高めることに役立てることができます。仕事の生産性は高まり勝率も上がるのであれば、それを利用するモチベーションも生まれます。また、そのやるべきことが時間軸に沿って体系的に整理されていれば、結果として、案件の進捗を見える化することもできます。

営業管理者も自分の経験や主観だけではなく、案件獲得のために行うべき行動ができているかどうかを見極めることができます。できていなければ、なぜできていないのか、どうすればできるのかを、個々の行動毎に具体的に考え、対策を講じることができるはずです。

そんな考えを形にしようと「営業活動プロセス・チェックリスト」を作ってみました。



将棋ならば「棋譜」、囲碁ならば「定石」、武道ならば「型」と言うべきものかもしれません。

案件獲得のために行うべき基本的な行動の手順を時系列に沿って体系化したものです。もちろん、個々の案件にまつわる諸事情は異なります。全てがこの手順に当てはまるとは思いません。しかし、基本的手順を押さえた上で、個々の案件毎に適用できれば、仕事の効率は上がるでしょうし、失敗の要件を潰す参考にもなるはずです。

これを継続的に利用することは、営業のあるべき行動を体験的に学び、定着させることにもつながるでしょう。

営業管理者は、営業活動の進捗やリスク、漏れのあるなしなど、営業活動の品質や生産性にかかわる状況を客観的かつ分析的に把握することができるようになります。また、進捗を担当営業と同じ基準で評価できるため、フォーキャスティングの客観性を高めることができます。このように、組織全体としての営業活動品質を一定のレベルに底上げするためにも役立つものと考えています。

若手、後進の育成においても有効です。営業活動が、概念や仕組みのレベルまでしか示されていない場合、それを実際の「行動」に転換するには、それを指導する個人の経験的解釈や表現力によるフィルターがかかります。そのため、指導として示された「行動」には、ばらつきが生じかねません。

本チェックリストは、この「行動」を明示しているので、個人によるばらつきを少なくしてくれるはずです。特に、営業の「行動」とは何かが白紙の新入社員を指導する先輩営業や営業管理者にとって、有効なOJT指導ツールとなるはずです。

よろしければ、ご活用ください。また、近々、このチェックリストをスマホのアプリにして、無償でご提供しようと準備を進めています。こちらも自由にお試しください。そして、ご意見やご感想をお送り頂ければと願っております。


■【ITソリューション塾・第14期】日程と内容が決まりました!

開始は10月2日(水)から毎週水曜日18:30-20:30、全10回です。

今回もこれまで同様、テクノロジーやビジネスの最新トレンドを抑えつつも、表層的なキーワードを追いかけるのではなく、トレンドが生みだされた歴史的背景や顧客価値など、トレンドの本質を抑えることを力点に置くつもりです。

新たたテーマや改善点としては・・・
  • 仮想化をSDxの視点で捉え直しそのビジネス価値を整理する。
  • SIビジネスに危機感が漂う中、現場価値の徹底追求と現物主義により、顧客満足と高い利益を実現している「アジャイル型請負開発」の実践事例の紹介。
  • ストレージとデータベースのテクノロジーの大きな変化がITのプラットフォームやアプリケーションの開発をどう変えるのか。
  • ビッグデータの本質と新しい動きを踏まえたビジネスの可能性。
  • セキュリティやガバナンスの原理原則とクラウド・ファーストに向けた取り組み。
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・・・など、これからの変化を先読みしつつ、その次の手を考えるヒントを提供したいと考えています。

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