2012年11月17日土曜日

内製化支援というパンドラの箱

「そういうソリューション・ベンダーさんとは、ぜひ戦略的パートナーとして、積極的に組みたいですね」

先日、社員一万名ほどを擁するある大手企業の情報システム部門長との会話で、こんな言葉か飛び出しました。

今、多くの情報システム部門は、内製化を模索しています。これまでのように、開発を外部に丸投げするのではなく、自分たちでシステム開発を手がけようという動きです。

それは必ずしもコスト抑制のためばかりではありません。自らの存在意義をかけた取り組みです。

グローバル化の進展、ビジネス・ライフサイクルの短期化、顧客嗜好の多様化といったビジネス環境の変化は、スピードや俊敏性を経営に求めています。ITは、その手段として、これまで以上に戦略的価値が高まっています。

こんな時代の要請に、情報システム部門が応えられないとしたら、それは経営的に見れば、存在意義のない組織と言われても仕方が無いのです。

情報システム部門が、この変化に対応するためには、クラウド化と開発の内製化は、必須の要件となりつつあります。

既存のIT基盤の統合集約とクラウド化は、プライベート、パブリックの使い分けはあるにしても、これまでのような、ひとつひとつ見積もりを取って、外部に依頼する手間を省きます。そして、リソース調達や変更の自由度と生産性を大幅に向上させることができますし、スピードと俊敏性は、格段に向上します。また、需要の変動に応じてリソースの大きさをダイナミックにスケールできることも、大きな魅力となります。

開発も同様に、これまでのような個別に見積もりを取り、仕様を決めて外部に任せるウォーターフォール型の外注方式では、対応できません。自らの手で、アジャイルに、超高速に開発してゆく手段を持たなくてはならないのです。

しかし、情報システム部門にとって、これは容易なことではありません。そもそも、これまでは、このような仕事の多くを、外部に依存してきたわけですから、スキルを持った人材が内部にはいないのです。

そこで、この状況を裏返して考えて見れば、ITソリューション・ベンダーは、これらができる人材やスキルを抱えているわけです。ならば、そのスキルを使って、お客様のクラウド化や内製化の支援を積極的に行えば、それはまさに、お客様のニーズに合致することになるはずです。

これは、自分で自分の首を絞めるような話かもしれません。しかし、お客様のニーズがそこにある以上、それに応えるべきでしょうし、ビジネスのチャンスがあるはずです。

確かに内製化が進めば、全体としての外部への開発需要は減ることになります。そのために、これまで開発に従事していたベンダーは切られることになるでしょう。しかし、だからといって、全てを内製化できるわけではありません。むしろ、内製と外注の役割の分化が最適化され、全体としての生産性を高めてゆくことになるはずです。

そのときに、切られる側に立つか、残る側に立つかです。内製化支援は、情報システム部門が、まさにそんな意志決定を行う上で、大きな判断基準になるのではないでしょうか。

我が国では、IT産業は、もはや成長産業ではなく、成熟産業といえるでしょう。かつてのように、全てが生き残れる時代ではなくなりました。競合が常態化し、淘汰される時代へと変わりつつあります。

「そういうソリューション・ベンダーさんとは、ぜひ戦略的パートナーとして、積極的に組みたいですね」

この発言は、「内製化支援に積極的に取り組んでくれるソリューション・ベンダーがいたら、どうでしょうか?」という、私の質問への答えでした。

お客様が何を求めているかに目を背けていては、ビジネスのチャンスはありません。例え、それが、これまでの収益基盤を脅かすことであったとしても、対処しなければならないのです。そして、この需要の変化をどのようにビジネスにしてゆけばいいかを考え抜き、自らを変革する決断を下さなくてはなりません。

開発~保守~運用のサイクルを自ら回してきたこれまでの収益モデルから、お客様自身にこのサイクルを回していだくために、何をすべきか、何ができるかを考える。わたしは、これからのビジネス・チャンスは、こんなところに潜んでいるように思っています。

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